3月1日の『学童野球メディア』正式オープンに先駆けてスタートした、月イチの当連載コラム。これで11回目、2023年最後の回を迎えました。
継続的に拝読いただいている方々がいるとすれば、私のパーソナリティもおおよそはお見通しのことと思います。根っからの被虐体質で、愚直で実は打たれもろくて、油断すると弱気の虫やマイナス思考に染まってしまう。
そういうマインドを可能思考で懸命に覆しつつ、数えきれないほどの失敗と教訓も踏まえた経験則でカバー。そうしてどうにか、今日があります。
国内5つ目のボールパークを千葉県柏市にオープン、本社機能も移転して1年となる
要するに、私も取るに足らない一個の人間。「社長」という肩書きはあっても、高貴な家柄でもなければ、TVドラマのような出世競争を勝ち抜いたわけでもない。あるいは、高潔な人格者として悟りを開くようなご身分でもありません。
けれども! そんな私ですが唯一、胸を張って誇れることがあります。いや、これは自慢と言っても差し支えないでしょう。
『プレーヤーの真の力になる――』
われわれフィールドフォースの人間は、社員やアルバイトの隔てもなく誰もが、この経営理念を唱和できます。そしてそれを羅針盤として常に念頭に置きながら、それぞれに判断や選択をして行動しています。
どの拠点のどのセクションにおいても、上司の命で従順に働いているだけ、という者は皆無。各々に『プレーヤーのため』という意思が宿っていて、それが新たな発想や目に見える実行を促し、改善改良を伴う持続性にも結びついている。結果として、それらが仕事となって報酬を得ている、というスタンスの者たちです。
そういう今。現実を目の前にすることが私には至上の喜びであり、社長として何よりも誇らしく思うところです。
本社オフィスより。直接の接点はなくても、電話やパソコンの向こうにいるプレーヤーの顔が彼女にはいつも見えているようだ
たとえば、国内5つのボールパーク(全天候型練習場)では現在、『エースフォー野球塾』 という小学生対象のスクールを開校しています。「エース(ace)」とは投手の柱、「フォー(four)」とは四番打者の意。生徒と講師とでそこを目指しましょう、という願いを込めて命名したスクール事業です。
講師陣はフィールドフォースの社員たち。小学生を指導するにあたり、彼ら彼女らは私のリクエストや助言を必要としていません。内容の改善や日々の学びにも意欲的で、自らトライをしています。なぜなら、生徒たちをエースや四番打者にしてあげたい、と本気で思っているから。まさしく『プレーヤーの真の力になる』を具現しようと努めているのです。
プレーヤーの要望はボールパークにとどまらず。今年は屋外でも野球塾をスタートしている
フィールドフォースは野球用具メーカーです。私は企画会議で直接に訴えることもありますし、自分の中で最終ジャッジをする際に言い聞かせる言葉があります。
「たとえ万人に受けなくても、1人でも2人でもそれを欲している人がいるならば、創るべき!」
こうして毎月、新たなアイテムを世に生んでいます。中には思わぬ大ヒットもあり、製造停止中のものもあります。でも、何より問われているのは、売れたか売れなかったか、ではない。売り方も含めて、プレーヤーの力になれたのかどうか――。ここがブレずに来ているからこそ、ネットワークとアンテナは広がるばかりで、アイデアも新たに生まれ続けているのだと思います。
2019年5月、東京・足立区に続く2例目のボールパークを北海道・札幌にオープン
全国的に縮小・悪化する野球環境を、少しでも拡大・改善させたい。この想いから8年前に初めてオープンしたのが、東京・足立区のボールパークでした。
当初は野球塾もなく、場所と設備の時間貸しをしていました。あるとき、練習に訪れた父子の父親が野球未経験者で、息子のティー打撃もまともにサポートできないという光景がありました。
見かねた社員の一人が、その父子の練習をサポート。もちろん、無償のボランディアです。この活動がきっかけとなって、施設利用者の練習を支援する『プレーヤーサポート』という無償サービスを始めました。その後、増え続ける依頼に対応が難しくなってきたことから、スタートした事業が先述の『エースフォー野球塾』。こちらは有料ですが、月謝の額は相当に良心的な設定をしています。これらも根底にあるのはやはり「儲けよう」ではない。「プレーヤーの力に!」が第一義なのです。
ボールパーク柏の葉で開校中の『エースフォー野球塾・低学年の部』より
毎日の朝礼で、経営理念を唱和する企業は日本ではまだ多数派でしょうか。われわれフィールドフォースもそうなのですが、目的は社員に暗唱させることではない。大切なのはそれを具現することであり、そのために毎日、全員で声を合わせて確認をするのだと私は考えています。
「フィールドフォース」は社名であり、商品のブランド名。さらに意訳をすると、経営理念ともリンクしてきます。
2006年に、元同僚の2人と私の3人で創業したのがフィールドフォース。社名は3人でいろいろと出し合った末に、一発ですんなりと決まりました。
「フィールド(field)」とは、直訳すると野球場やグラウンド、野原などの意味。私たちはさらに、自社や工場や取引先や野球チームなども「フィールド」ととらえました。そして、そこで活躍する人たちのパワーやエネルギー(=force「フォース」)になりたいという想いを、そのまま社名にしたのです。
つまり、『プレーヤーの真の力になる』という経営理念も、社名が翻ったに過ぎないわけです。社名、ブランド名、経営理念。これらが三位一体となっていて、それを全社員が理解して実践ができている。そういう企業は、朝礼と唱和を日課としている企業ほどには多くないはずです。
協賛大会は今ではもう数えきれないほど。写真はメインスポンサーとなっている東京都知事杯の監督・主将会議にて
二番煎じではない、独自性。その優越感もまた、働く私の「フォース」になっています。一個の人間であると同時に、プレーヤーなのです、この私自身も。
(吉村尚記)